提言・要望

平成21年度中小企業関係施策に関する要望

平成20年8月

神戸商工会議所
名古屋商工会議所
京都商工会議所
大阪商工会議所

最近のわが国経済は、原油・原材料価格の高騰や世界経済の減速等の影響を受け、企業収益の悪化や先行き懸念が顕著になるなど、景気の下振れリスクが強まっており、とりわけ、地域経済や雇用の担い手である中小企業の景況感が急激に下降している。

そこで、今こそ、政府や関係機関が一体となって、逆境に負けずに頑張る中小企業・小規模事業者の経営力強化に資する施策を拡充し、事業の継続・発展を多方面から支援するとともに、自社の技術力や競争力を高めることにより、さらに強みを伸ばそうと懸命に努力する前向きな中小企業を強力にバックアップすることが重要である。

こうしたなか、関西・中京圏における中小企業は、大阪湾岸地域でのパネル生産等を核とする先進的な企業集積の形成をはじめ、医療・ライフサイエンス関連やモノづくり等、エンジン産業の躍進に牽引される形で伸びていこうとしており、このような地域特性を活かした“都市型中小企業”の成長を起爆剤として、わが国経済の大宗を占める中小企業全体の発展やイノベーションにつなげていくことが肝要である。

かかる観点から、我々名京阪神の4商工会議所は、下記の諸施策の実現にむけて、特段の配慮が払われるよう強く要望する。

T.頑張る中小企業を応援する経営力強化策

1.中小企業の経営力向上を図る支援強化

(1)小規模事業対策予算の十分かつ安定的な確保

三位一体改革の一環として、平成18年度より小規模事業経営支援事業費補助金の都道府県への税源移譲が行われたが、各都道府県の財政事情により一方的に関連予算が縮減されるところも見受けられる。そこで、地域によって支援体制や実施水準等に大きな格差が生じないよう、国が責任をもって、全国的な基準や指針等を都道府県に対し提示・指導するなど、小規模事業対策の実施体制や予算確保に向けた働きかけを積極的に行われたい。

(2)経営承継の円滑化に向けた支援の充実

中小企業経営者の高齢化が進展し、本格的な世代交代期を迎える中で、円滑な経営承継が企業の存続のみならず、地域経済や雇用を守る観点からも喫緊の課題となっている。こうしたなか、「経営承継円滑化法」が成立し、今年から金融、税制、法制など、総合的な支援策が順次講じられることとなっているが、同法の趣旨や経営実態等に沿って、中小企業にとって真にメリットを感じ、使いやすい制度となるよう特段の配慮をされたい。

(3)大規模災害対策にかかる企業支援の拡充

中国・四川省や岩手・宮城両県で起きた大地震など未曽有の災害が教えているのは、災害対策の重要性である。そこで、特に東海地震、東南海地震、南海地震の強化指定地域における防災対策を促すため、耐震強度の向上を図る改修・補強等を行った工場や事業所等に係る固定資産税等の引き下げ、並びに特別償却の拡大など、税制上の優遇措置を講じられたい。
併せて、中小企業へのBCP(緊急時企業存続計画)の普及を図るとともに、BCPに基づいた安全化対策への助成金制度や税制上の特別措置を創設されたい。

(4)中小企業に関する取引等の適正化推進

原油・原材料価格の高騰等を背景として、下請取引のみならず、交渉力の優劣により不公正な取引が増加し、中小企業の経営が圧迫されている。ついては、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法をはじめとする関係法規や、下請取引推進ガイドライン等による指導・監督を徹底されたい。
また、同ガイドラインの策定があらゆる業種に拡充され、普及・浸透するよう配慮するとともに、活用状況・効果等を定期的に検証・公表し、必要に応じて改訂を行うなど体制強化を図られたい。

2.中小企業に対する金融支援の強化

(1)株式会社日本政策金融公庫の機能強化

中小企業の資金調達に影響が出ることがないよう、今年10月より新たに統合・設立される政策金融機関においても、民間では十分な対応が困難な中小企業向け融資機能の維持・強化を図られたい。具体的には、第三者保証を不要とする融資や無担保融資の更なる拡大等、担保や個人保証に依存しない融資の推進を通じて、円滑な資金供給に努められたい。さらに、店舗の統廃合等により、利用者である中小企業者の利便性が損なわれないよう配慮されたい。

(2)信用保証制度における中小企業への配慮

厳しい経済環境の中で、大企業に比べ資金調達方法に限りがある中小企業にとって、信用保証制度は大きな役割を果たしている。ついては、昨年10月に導入された責任共有制度に伴い、金融機関の貸出姿勢が消極化することがないよう十分に配慮されたい。また、資金繰りの円滑化に大きな効果が期待できることから、責任共有制度の対象外である「小口零細企業保証制度」の保証限度額(現状は1,250万円)を拡充されたい。

(3)セーフティネット融資の拡充

原油・原材料価格の高騰や建築・住宅着工市場低迷の悪影響は、今や該当業種のみならず、幅広い中小企業にまで広がっている。こうしたなか、急速な業況悪化に苦しむ中小企業や小規模事業者の円滑な資金調達面で支援するため、政府系金融機関によるセーフティネット貸付(経営環境変化資金融資)等に関しては、制度の趣旨を踏まえ、追加担保を不要とするほか、対象業種の拡大、貸付金利の引き下げ、貸付金額の拡大など、同制度の更なる拡充を図られたい。

3.中小企業を支える人材確保策の強化

(1)ジョブ・カード制度の充実実施

今年度から本格的にスタートした「ジョブ・カード制度」の効果的な普及・推進を図るためには、求人企業・求職者にとって活用しやすい制度とすることが肝要である。そこで、訓練実施企業に対する助成制度の更なる拡充、中堅・中小企業ニーズを汲み取った制度運用など、中小企業が活用しやすいよう制度の改善を図られたい。また、「地域ジョブ・カードセンター」が十分に機能を発揮できるよう、各地の独立行政法人雇用・能力開発機構や職業能力開発協会、ハローワークやジョブカフェ等の関係機関による協力連携が十分行われるとともに、ハローワークおよびジョブカフェにおけるキャリアコンサルタントの増員・常時配置など、求人企業・求職者双方へのフォローアップ策の充実に努められたい。

(2)中小企業雇用安定化奨励金の拡充

非正規社員の正社員化については、大企業と比べ非正規社員への依存度が高い中小企業にとってコスト増に繋がりかねない。そこで、中小企業の経営実態に配慮した雇用政策を講じるとともに、「中小企業雇用安定化奨励金」については、助成額や対象範囲の拡充を図られたい。

(3)シニア層の技能力活用

団塊世代などシニア層が培った技術や経験を中小企業の経営に活かすことができるよう、また企業や大学等での職業能力訓練が再就職につながりやすくなるよう、シニア層を対象にした「ジョブ・カード制度」を創設されたい。
さらに、シニア層を前向きに雇用する中堅・中小企業の人件費負担等を軽減するため、「中小企業定年引上げ等奨励金」制度については、奨励金額を引き上げられたい。

U.強みを伸ばす“都市型中小企業”の成長力強化策

1.“都市型中小企業”における連携の更なる促進

(1)大企業群と地域中堅・中小企業のマッチング商談会への支援

中堅・中小企業が潜在的に有する“成長力”を伸ばすためには、国内外で高い競争力を持つ企業群と事業連携を図っていくことが重要である。そのためには、高度なクラスターを形成する大企業群と、高付加価値技術や製品等の共同開発などの技術や能力を有する中堅・中小企業群の結びつきを強めることが肝要である。
そこで、こうした有益な協業関係を構築するため、地元自治体等が主催する、大企業群と中堅・中小企業とのマッチング等を図る“逆見本市型”商談会事業等への支援制度を拡充されたい。

(2)地域中堅・中小企業による大企業への売り込み事業への支援強化

地域経済の活性化や中堅・中小企業の“成長力”向上を図っていく観点から、地元大企業や有力企業群と中堅・中小企業が有する技術シーズ同士をマッチングする専門家を配置するなど、地元自治体等が相互連携を促進させる支援策を更に強化されたい。

(3)地域中堅・中小企業による産学官連携の支援拡充

中堅・中小企業にとって、産学官連携は限られた経営資源の中で研究開発を促進するために有効な手段であるが、その活用はいまだ低調であり、連携を促進するためには、入口でのマッチングを実現するだけでなく、研究・技術開発の成果の最終目的である事業化までコーディネートする人材が重要である。そこで、「地域イノベーション創出研究開発事業」および「地域資源活用型研究開発事業」については、より多くのプロジェクトが採択され、プロジェクトマネージャーを置くことができるよう、予算を拡充されたい。

2.“都市型中小企業”における技術開発力の向上

(1)新たなリーディング産業に参画する中堅・中小企業への支援拡充

大阪における北大阪バイオクラスターや神戸における医療産業都市、京都のバイオシティ構想など、新しく芽生えたリーディング産業の振興には、地域中堅・中小企業が積極的に参画していくことが必要である。そこで、研究開発や試作、販売などの、事業化に向けた取り組みに対する補助制度を拡充するとともに、薬事法に基づく承認手続きの簡素化や承認に関する相談体制の強化などを図られたい。

(2)中堅・中小企業の新事業展開に対する支援拡充

「中小企業新事業活動促進法」に基づく経営革新や技術革新等に取り組む事業活動を支援することは、中堅・中小企業のチャレンジ精神を喚起させるとともに、新事業の創出や活性化に非常に有効である。ついては、経営革新補助金の復活等支援メニューの拡大やSBIR(中小企業技術革新制度)の支出目標額の一層の増額等、同法に基づく承認を受け、新事業を展開しようとする中堅・中小企業への支援を拡充されたい。

(3)次世代スーパーコンピュータの効果的な利活用の促進

神戸に建設中の次世代スーパーコンピュータについては、幅広い国内の中堅・中小企業における利活用が促進されるよう、効果的で使い易い制度・仕組みを整備されたい。また、中堅・中小企業に対する相談体制の早期確立に努めるとともに、産業利用ニーズの掘り起こしを図るため、企業の経営者や研究者を対象とした利活用促進セミナー等を開催し、計算科学に対する理解増進を図られたい。

(4)中小企業の環境問題への取り組み支援

中小企業が自身で開発できない省エネ・創エネ技術や環境設備の浸透を一気に図るには、民間同士の技術供与や相互利用を促進すべきである。そのためには、大企業や先端企業等が持つ最高水準の技術などを国が一旦買い上げて中小企業に供与したり、先進的な技術や設備などの利用料に対する助成制度を創設するなど、中小企業が活用しやすいよう支援策を強化されたい。また、省エネルギー設備等の設置・導入に対する補助事業の予算拡充、補助率の拡大を図るとともに、税制面の優遇措置、融資制度などの支援措置を拡充されたい。

3.“都市型中小企業”における“サービス・イノベーション”の加速

(1)産学官連携によるサービス・イノベーション促進組織への支援

サービス産業におけるイノベーションと生産性向上を加速させるため、『産官学連携によるプラットフォーム』を新たに構築し、関連企業と大学・研究機関等との連携による共同実証研究や成果のフィードバック、並びに製造業など異業種との融合・コラボレーションの推進を図るなど、商工会議所を中心とする、サービス産業分野における産官学による英知の結集と相互の連携・協働等を加速させる地域での取り組みを積極的に支援されたい。

(2)サービス産業の経営ノウハウ等の知的財産

サービス産業では、企業が生み出した新たなサービスやノウハウが容易に模倣され、その優位性が比較的短期間で消滅するため、付加価値の維持・向上を図ることが困難である。そのため、企業が開発・提供するサービスやノウハウの新規性・優位性・革新性等の特徴はもとより、各種マニュアルや経営管理形態を含む事業・業務・サービスなど経営ノウハウ全般を知的財産として保護し、世界規模で特許化出来る制度・システムを早急に研究・創設されたい。

(3)中小小売商業・商店街等の活性化支援策の拡充

社会構造の変化等によって厳しい経営環境に直面しながらも、自ら知恵を出し合い果敢に挑戦しようとする中小小売店、商店街への支援を拡充し、中小商業活性化関連事業を一層強化されたい。また、商店街や商業集積地域の歯抜け現象の防止や、再生・賑わい創出を図る観点から、廃業事業者の円滑な転居や跡地店舗の活用を促す税制等の支援措置を創設されたい。

以上


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