令和7年(2025年) 年頭所感



 明けましておめでとうございます。
 皆さまには、令和7年の新春を健やかにお迎えのこととお喜び申し上げます。

 昨年は、我が国や米国をはじめ主要国の大統領などが交代し、国内外の政治体制に大きな変動が見られた1年でございました。
また経済においては、日経平均株価が4万円の大台を突破し、史上最高値を更新するとともに、春闘の平均賃上げ率が5%を超えるなど、デフレからの完全脱却に向けて着実に動き出しております。一方で国内外の政治動向や世界情勢、物価やエネルギー価格の動向など、今後の先行きには不透明感が残っております。
名古屋商工会議所 会頭 嶋尾 正 名古屋商工会議所 
会頭 嶋尾 正

物価高や人手不足への対応

 こうした中、目下、多くの企業で深刻な課題となっているのは、円安などによる原材料やエネルギー価格の高騰、そして慢性的な人手不足への対応です。
 昨年来、賃上げの動きが広がっていますが、中小企業の約6割が業績の改善を伴わない防衛的な賃上げを強いられており、労務費の上昇分を含めた取引価格の適正化を進めることが、成長型の日本経済を実現するためにも必要不可欠です。
官民一体となってパートナーシップ構築宣言の実行性を高め、価格転嫁を商習慣として定着させるとともに、省力化やデジタル化などを推し進めることで生産性を高め、捻出したリソースを新たな付加価値の創出や新分野への進出などにつなげていくことが求められています。
経済・社会構造が目まぐるしく変化する時代にあって、企業が持続的な発展を続けるためには、常に環境に適応し、自らを変える「挑戦」や「変革」を続けていく必要があります。
例えば、高い伝統技術を有する企業が、その高い技術を全く異なる商品に活かし海外市場に進出した事例や、BtoBのものづくり企業が、消費者向けの商品を開発し販売に挑戦している事例もございます。
このように、私ども商工会議所といたしましては、前向きに新たなことに取り組む企業をしっかりとサポートしてまいりたいと考えております。

中小企業の支援や次世代産業の育成

 会議所活動の根幹は「中小企業の支援」です。経営指導員による巡回・窓口相談を軸にしながら、中小企業に寄り添った「伴走型支援」を行なうとともに、「メッセナゴヤ」や「アライアンス・パートナー発掘市」などの新たな商品の開発や販路開拓につながる事業を積極的に展開してまいります。
 中小企業のデジタル化については、「Pit-Nagoya」や「NAGOYA DX・生産性向上ワールド」などを通じて、IT利活用や生産性向上の取り組み事例の紹介から実際の導入まで、企業の取り組み状況に応じたサポートを行なうことで企業の後押しをしてまいります。
また、当地はものづくり産業の集積地でございますが、自動車産業が歴史的な転換期を迎える中、既存産業の維持・強化に加えて次世代の成長産業を育成していくことが重要です。
昨年10月に日本最大のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」が名古屋市内に開設されましたが、名商が運営協力するインキュベーション施設「なごのキャンパス」とも有機的な連携を図りながら、企業とスタートアップの協業により生まれる新たなイノベーションにも期待しているところです。この他にも、ものづくりの高い技術力を活かした航空・宇宙・医療分野などへの参入支援などを行なってまいります。

都市の魅力の向上と産業や暮らしを支える交通インフラの整備

 都市の魅力を向上するためには、歩いて楽しい街づくりや都市として機能を高めるインフラ整備を地域一丸となって推進していくことが重要です。
 アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を控え、ハード・ソフトの両面において受け入れ環境が着実に進む中、インバウンド需要などを取り込み、交流人口を拡大していくとともに、回遊性を高め、いかにして市内全体の活性化を図っていくかが課題となっております。
こうしたことから、名駅から栄までの東西軸に加え、名古屋城から金山・熱田までの南北軸の活性化を図ることで、より面的な広がりを意識した賑わいづくりや街づくり、商業振興などに取り組んでいきたいと考えております。
また、当地の産業や暮らしを支えるインフラ整備につきましては、先に申し上げたリニア中央新幹線をはじめとする陸・海・空のインフラ整備や災害に強い都市基盤の整備など、関係機関と連携しながら推進していくことで、都市機能の向上に努めてまいります。

むすび

 「巳年」の「巳」という漢字は、胎児の形を表した象形文字で、蛇が冬眠から覚めて地上にはい出す姿を表しているとも言われ、「新しく産まれてくる」、「将来・未来がある」などの意味があるそうです。
 皆さまにおかれましては、変化の激しい時代においても、次のステージに駆け上がり「新しい時代を切り拓く」一年にしていただきたいと思います。
 本年も会議所活動に対する一層のご理解とご支援をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

2025年1月1日

以 上

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