令和4年(2022年) 年頭所感



 明けましておめでとうございます。
 皆様には、令和4年の新春を健やかにお迎えのこととお喜び申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルスの変異株が日本国内でも爆発的に拡大し、その影響の長期化により飲食や観光、運輸などの事業者を中心に厳しい経営環境に追い込まれ、コロナに翻弄された一年でありました。ワクチン接種が進み、昨年の秋以降、国内での感染者は落ち着いているものの、世界的には収束の兆しが見えず、今なおウイルスとの闘いが続いております。

 また、持続可能な社会の実現に向けた環境対応の流れが加速し、政府からは「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、COP26「グラスゴー気候合意」では、「産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃に抑えること」が目標として明記されるなど、厳しい大きな命題を突き付けられた社会経済の転換点でもありました。

 今年は、世界各国の連携のもと、感染症対策やグローバルな気候変動の危機などの共通課題の解決に向けて改めて危機感を共有し、相互協力していくことが一層強く求められるものと思います。
名古屋商工会議所 会頭 山本 亜土 名古屋商工会議所 
会頭 山本 亜土

経済の正常化に向けて

 新型コロナ対策として、昨年7月には商工会議所でも名古屋市との連携のもと、約7,000名の会員事業所の皆様にワクチン接種の機会を提供させていただくことができました。今後はブースター接種や抗体カクテル療法の活用、経口治療薬の開発・普及などにより、経済の正常化が進んでいくものと期待しており、次なる感染の波に十分留意しながら「経済を回す」ことに力点を置く必要があります。
 新型コロナ対応に加えて、コロナ禍で顕在化したデジタル化の遅れなどの諸課題への対応は、今後の私どもの経済活動全般に大きな変革を強いることとなり、経営者の皆様にはこうしたビジネス環境の変化に迅速かつ的確に対応していくことが求められています。

中小企業支援、挑戦する企業の後押し

 昨年11月に第2次岸田内閣が発足し、今年は「成長と分配の好循環」の実現に向けた取り組みが本格稼働いたしますが、わが国の発展には国内事業所の99%超を占める中小企業がコロナ禍から立ち直り、新たな価値を創出しながら生産性を高めていくことが必要であると考えています。
 私ども商工会議所としては、4月から中小企業部の組織体制を抜本的に見直し、地域経済の担い手である中小・小規模事業者の事業継続に向けた約70名の経営指導員による「伴走型支援」を、より充実したものに致します。さらに、ビジネス環境の変化を前向きに捉え、デジタル化や新規事業などに果敢に挑戦しようとする中小企業・スタートアップの皆様を全力で支援して参る所存です。具体的には、名古屋中小企業 IT 化推進コンソーシアム(Pit-Nagoya)によるIT活用やセキュリティ対策の支援、クラウドファンディングや各種補助金活用による新規事業挑戦のサポートに加えて、会員の皆様から多くの期待をお寄せいただいている「メッセナゴヤ」をはじめとする商談会や交流会を積極的に開催し、ビジネスチャンスの創出に注力いたします。

デジタル化・カーボンニュートラルがもたらす産業の大変革への対応

 今後、5Gなどの次世代通信技術やセンシング技術、AIの発達により情報の高度利用が益々進み、さらにカーボンニュートラルへの対応が重なることで、様々な産業の構造や経済活動が変革されていくものと思います。
 当地主力の自動車産業に関しては、CASE・MaaSに代表される「百年に一度の大変革」が進んでおり、商工会議所としては、自動運転に関する法規制やCASE実現に向けた要素技術、EVシフトに対応するサプライヤーの動向を紹介して参ります。
 また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)があらゆる企業に必要になってくることから、働き方やサービスのあり方に変革をもたらす仮想現実(VR)をテーマとした展示会や、利便性が高まる様々なITツールの活用支援、デジタル活用に強みを持つ企業と地域の事業者とのマッチングなどにより、地域全体のDXを推進します。
 カーボンニュートラルに向けては、新素材・新技術などの紹介セミナーや視察会に加え、環境技術が一堂に会する「クリーンテック技術展」を開催いたします。
 また、引き続き、「なごのキャンパス」を核にスタートアップ支援に取り組むほか、医療機器産業や航空宇宙産業、農業分野への進出を支援するなど、モノづくり・情報技術を活かした多角化・販路拡大もサポートして参ります。

東京一極集中の是正と地域力の向上

 コロナ禍で、人や企業あるいは情報が首都圏に過度に集中していることのリスクが改めて認識されました。また、自然災害の頻発するわが国においては、国土強靭化やリダンダンシー(代替性)の確保が喫緊の課題であり、首都機能を全国数か所へ分散するなどしてバックアップする具体的な取り組みが必要です。
 特に、日本の中央に位置する当地は、リニア中央新幹線の早期全線開業中部国際空港の2本目滑走路、そして名古屋駅のスーパーターミナル化が実現することで、スーパーメガリージョンのセンター(中央)として、首都圏のバックアップ機能を十分に備えた地域に成り得ると考えております。
 また、東京一極集中の是正を唱えるには、それを受け入れるそれぞれの地域の魅力向上も大変重要な要素です。当地においても首都圏にない独自の「なごやの街の魅力」を高めていく努力を、経済界や行政、さらには市民の皆様を巻き込んで継続していく必要があると思います。
 具体的には、都心部をもっと「歩いて楽しい街」へと発展させていくために、道路や公園、河川(名古屋三川)を活用した賑わいある空間づくりを行政やエリアマネジメント団体の皆様と進めていきたいと考えています。また、名古屋の歴史や文化、モノづくり技術を想起させる「匠土産」「なごや菓八菓」などの土産物の認知度を高め、名古屋の魅力向上や誘客へとつなげていくことに加え、アジア圏から多くの人が訪れ、当地の注目が高まる2026年のアジア競技大会を見据えてスポーツの振興にも注力いたします。
 こうした取り組みを通じて、引き続き「躍動し愛されるナゴヤ」の実現を目指して参ります。

むすび

 今年は反転攻勢をかける一年です。コロナで活動がにぶった2年間の遅れを取り戻すためにも、地域経済の再生と躍動し愛されるナゴヤの実現に向け、“火付け役”として、あるいは“仲介役”として、自ら汗をかきながら取り組み、その動きが連鎖的に広がるよう努めて参ります。
 また、中期計画2021-2025で描いた当地の将来像「企業、街のいたるところでイノベーションが生み出される都市」に向け、関係機関との連携・協働を図りながら、迫りくる様々な課題に対応した事業を具体化して参る所存です。
 会員の皆様には本年も、商工会議所に対する一層のご理解とご支援をお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

2022年1月1日

以 上

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